『これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』

Jun 9, 2019 22:46 · 1299 words · 3 minute read

好きな本について書く。書評でも紹介でもないし、誰に向けた文章なのかもわからない。

これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景

これが見納め

『銀河ヒッチハイク・ガイド』のダグラス・アダムスが世界中の絶滅危惧種を見に行くという少々不謹慎な(!)旅に出た。そこで目にしたのは……。1990年の刊行以来、愛読者の絶えない不朽のネイチャー・ルポ。待望の初邦訳である。

みすず書房のページから引用。

かの有名な『銀河ヒッチハイク・ガイド』の著者であるダグラス・アダムスが動物学者マーク・カーワディンと共に世界を旅する旅行記となっている。
なんのために旅するかというと、絶滅危惧種を見に行くため。
アイアイ、コモドドラゴン、マウンテンゴリラ、キタシロサイ、カカポ、中国の川イルカといった絶滅の危機に瀕している動物たち。そういった動物たちの興味深い生態、保全・研究する人たちの奮闘、そして道中のドタバタ劇がユーモアたっぷりの筆致で描かれている。

もともと著者であるダグラス・アダムスの『銀河ヒッチハイク・ガイド』が好きで、そこからこの本を知った。「これが著者の最高傑作だ」と書いているレビューがあって「ほんまか?」と期待を膨らませて読んでみたが、その期待以上におもしろかった。

まずダグラス・アダムスの真骨頂であるユーモア溢れる文章が最高におもしろい。
それに加えて、ぼくはもともと翻訳調の文章が好きで、日本語として正しいんだけれどもどこか違和感があっておかしいような、あの感じが好きだ。この本はその点においてもツボをついている。
この『これが見納め』と『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズはどちらも同じ訳者で、安原和見さんという方なんだけど(調べてみたら鹿児島出身だった)、氏の翻訳がすばらしいんだと思う。もちろんオリジナルの良さがあってのことだけど。
ぼくは常々こんな文章を書けるようになりたいと思っている(本気で)。

単に文章がおもしろいだけでなく、動物保護についても大いに蒙を啓かれる。
(蒙を啓かれる、という表現はこの本で知ったのでここぞとばかりに使ってみた)
動物保護について、ぼく自身は何か特別な考えがあるわけではなかった。肉も食べるしたまには野菜も食べる。動物自体は好きだけど、保護のために何か活動をしているわけでもない、まぁよくある態度。 ではこの本を読んで動物愛護に目覚めたかと言うと、そうでもない。ただ、街中で動物保護のための募金活動でもしていたらちょっとくらい募金しようかなと思うくらいにはなった。レッドリストを眺めただけではこうはならないと思う。

あくまでユーモアとシニカルな態度をもって書かれていて、同情的だったり過度に感傷的だったりしないのも良い。
その中でも、登場する動物たちの愛くるしい生態の描写だったり、そうなってしまった背景(大抵はおろかな人間のせい)、保護するために奮闘している人たちのことを知ると、人間が環境に与えてきた影響について考えさせられる。しかも、ここに書かれていることはほんの一端でしかない。

この本は間違いなく好きな本ベスト5には入る。
最高におもしろく、やりきれない気持ちになる、魅力たっぷりな一冊。